公会堂「壊していいのか」/長崎新聞2014年5月5日記事

長崎新聞2014.05

長崎新聞2014年5月5日発行 21面

「国際文化センター」事業を構成/原爆復興で国内外から寄付、66年刊の記念誌に全容

長崎市の市民団体、長崎都市遺産研究会(代表・林一馬長崎総合科学大名誉教授)は、長崎原爆からの復興のため国内外より多額の寄付を受けて1950年代から県主導で推進されたプロジェクト「長崎国際文化センター」の全容を記した記念誌(66年3月刊)をこのほど入手。同センター事業の一つで市が解体する方針の市公会堂(魚の町)の価値がより明らかになったとして、広く周知する準備を進めている。研究会副代表の中村享一さん(63)は「原爆復興で世界の共感を得た大事業に位置付く公会堂を本当に壊してしまって いいのか」と疑問を投げ掛けている。

記念誌のタイトルは「長崎国際文化センターの歩み」。センター事業に関する本紙記事を 読んだ雲仙市の女性が先月、研究会に提供。同事業の一つ、水族館の運営会社役員だった 亡父が自宅に保管していたという。
A5判135ページで、当時の西岡竹次郎知事から引き継いだ佐藤勝也知事が会長を務めた同センター建設委員会の発行。「原爆の廃墟から復興し、香り高い国際文化の交流を通じて、恒久的人類平和に貢献しようとする年頭のもとに(同建設委員会を」設立した」とする佐藤知事の式辞のほか、整備した公会堂、県立図書館、水族館、体育館、美術博物館、プールの概略、込められた平和への思い、国内外からの寄付金の使い道などが記されている。

中村さんが注目するのは、センター事業に対する世界の評価の高さだ。記念誌によると英国の著名な歴史家アーノルド・トインビー氏が56年の来日時、同センター建設運動に感激。「長崎の人々の自ら新しい姿を生みつつある陣痛に、私は最大の尊敬を表すると共に、私は私の友だちらによびかけ、力の及ぶ限り協力したい」と述べたと英国紙ロンドンタイムズや米国紙ニューヨーク・タイムズなども当時、センター事業を紹介。国内外の寄付約3億2900万円に県市の資金などを合わせ、税源は9億円を超えた。中村さんは現在の貨幣価値で約135億円と試算する。公会堂は総事業費約2億5千万円で寄付金は約3千万円を充てた。県立図書館も寄付金約6千万円を使った。

研究会は近く、記念誌を複写し長崎市立、県立図書館のほか、市内高校などに贈る予定。中村さんは「記念誌が見つかったことで、世界からの寄付で造られた公会堂や県立図書館などの価値がはっきり証明された。残された建物をどう生かすかが問われている」と話している。(山口紗佳)

投稿者

長崎都市遺産研究会
長崎都市遺産研究会

長崎都市遺産研究会は、都市の中で埋もれていたり、解体されようとしている貴重な建築遺産を発掘、保全し、次世代に継承するための支援活動を行う市民団体です。

  • Facebook

http://www.nagasakicitylegacy.info

Home > ドキュメント > 公会堂「壊していいのか」/長崎新聞2014年5月5日記事
有識者メッセージ
有識者メッセージ