長崎新聞2013年1月26日12面-2

「地域活性化につなげて」

「地域活性化につなげて」「使いやすい市役所に」―。
田上富久長崎市長が新庁舎と市公会堂代替施設の建設を発表した25日、市内では新たなまちづくりへの期待と同時に、取り壊される公会堂を惜しむ声も聞かれた。

市民や建築専門家らでつくる長崎市庁舎建替に関する市民懇話会の鮫島和夫座長(66)は「場所をただ移転するだけでなく市民が使いやすく市職員が働きやすい市役所にして」と機能性向上も注文。新大工町から浜町、大浦を結ぶ「まちなか軸」との連携、市民会館の整備や公共交通網の再編も合わせ「地域活性化を考えるいい機会だ」とした。

その「まちなか軸」を構成し、公会堂にも近い長崎市中通り商店街振興組合の近金栄治副理事長(52)は「大歓迎」。商店街を通る市職員や市役所利用者の増加を見込み「店の売り上げ増につながる」と期待。

市役所を訪れていた同市江里町の無職、小川智美さん(42)は「本館と別館を行き来したり、担当課の場所が分からず不便だった。一つの建物になれば解消される」と話した。

くんちや芝居の舞台 公会堂解体惜しむ声

 一方、築50年を超える公会堂は市民の愛着も深い。公会堂開設時からバレエの舞台として利用してきた「かとうフィーリングアートバレエ」主宰の加藤久邦さん(81)は「たくさんの思い出が詰まっている。なくなったら悲しい」とぽつり。

定期的に劇団を招いて鑑賞している市民団体「長崎市民劇場」の尾上一江代表幹事(71)は「取り壊しから文化施設完成まで芝居を見る場所がないのは困る。策を考えて」と要望する。

長崎くんちの奉納踊り会場の一つ、公会堂前広場がなくなることに長崎くんち塾の楊爾嗣塾長(61)は「観光客が出し物を気軽に見る場所は必要。中央公園(賑町)など別の場でするか庭先回りを増やすか考えなければ」と話した。

現庁舎や公会堂の周囲には路線バスや路面電車が走っている。各事業者とも路線変更の具体案はまだないが「乗客の動向次第では運行本数や経路の調整が必要かもしれない」などとしている。バス停などの「市役所前」「公会堂前」の名称変更は「これから検討する」という。
(永野孝、永江倫子)

長崎市庁舎と市公会堂の歴史

1878年11月:長崎区役所を現在の桜町小の場所に開所
1884年04月:現在地に区役所、議事堂完成
1889年04月:市制施行
1914年12月:新しい市庁舎完成
1930年12月:旧公会堂(栄町)落成
1945年08月:原爆投下で旧公会堂消失
1958年03月:市庁舎が火災で焼失
1959年04月:現在の市役所本館が完成
1961年11月:現在の市役所別館が完成
1962年06月:市公会堂が完成
1987年08月:庁内に庁舎改築検討委員会発足
1992年03月:市庁舎建設整備基金の設置
2009年06月~10年03月:市庁舎ち市公会堂などの耐震診断を実施
2011年02月:田上富久市長が市庁舎は「建て替え」、市公会堂は「機能を確保する方法を検討」と表明
2011年06月:市議会市庁舎建設特別委員会を設置
2012年03月:長崎市庁舎建替に関する市民懇話会、公会堂等文化施設のあり方検討委が報告書提出
2013年01月:新市庁舎と公会堂に代わる文化施設の建設場所決定

長崎市庁舎本館・別館・市庁舎周辺の主な分散庁舎

番号:施設区分/所有者/配置部署
①本館/市/市民課、財政課、学校教育課など
②議会棟/市/議会事務局
③別館/市/障害福祉課、子育て支援課、上下水道局総務課など
④職員会館/市/しごと改革室
⑤商工会館別館/区分所有/商業振興課、観光政策課、都市計画課、交通企画課など
⑥交通会館別館/区分所有/統計課、市選管、世界遺産推進室
⑦桜町第2別館/市/住宅課、建築課、設備課
⑧明治安田生命長崎興善町ビル/民間/情報システム課
⑨金屋町別館/市/農林振興課、水産振興課、ながさきの食推進課など
⑩市民会館/市/スポーツ振興課、文化財課、生涯学習課など

長崎新聞2013年1月26日12面-2

長崎新聞2013年1月26日12面-2

投稿者

長崎都市遺産研究会
長崎都市遺産研究会

長崎都市遺産研究会は、都市の中で埋もれていたり、解体されようとしている貴重な建築遺産を発掘、保全し、次世代に継承するための支援活動を行う市民団体です。

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