長崎新聞2013年1月26日12面-1

市庁舎建て替え「利便性 経費減を重視」
田上市長90億円の財源不足課題

長崎市の新庁舎を市公会堂敷地に建設する方針を25日に表明した田上富久市長。現地建て替え(工期8年程度)ではなく公会堂敷地で1棟に集約して建設(同3年程度)する理由について、工期が短く、市民の利便性や建設コストの縮減、職員の業務効率を重視した点を挙げた。また、市中心部に150メートルほど近づくことから商居街のにぎわいに寄与する「まちづくり」の視点も強調した。

市は、市庁舎の老朽化や耐震強度不足を踏まえ、現在地と公会堂敷地の2案で建設地を検討してきた。

「市民に不便を掛ける時聞をできるだけ短くしたい。平地に一括して建設できるのでフロアレイアウトも自由度が高い」。公会堂敷地案を選んだ理由を田上市長はこう説明。市中心部の中通り商庖街など「まちなか軸」に一歩近づくとし、「(市庁舎が)長崎駅や県庁とまちなかをつなぐ場所になる。人の流れをつくりプラス要素がある」と述べた。

事業費は200億円程度を想定。市庁舎建設整備基金は2012年度末で110億円で、財源は90億円不足しているが「コストの庄縮に努め有利な地方債を活用したい」と述べた。市議会市庁舎建設特別委が提案した市民債の活用も検討する考え。

解体が決まった公会堂については文化財的価値があり、存続を望む市民もいる。保存については「意匠の一部を残すなど意見があれば検討する」と述べた。

一方、同日開いた同特別委は新庁舎建設について、市民への説明責任を果たし、幅広い意見を聞き入れる機会を設けることなどを市に求める記述を調査報告書に追加した。
(田中祐作)

解説「未来見据え県都デザインを」

1884年の区役所設置以来、現在地に1世紀以上ある市庁舎の移転を決断した長崎市。厳しい財政状況の中、大型事業ラッシュが続くため、慎重な財政運営が求められる上、100年後を見据えた県都のグランドデザインも必要だ。

大型事業は新年度から本格化。一般廃棄物焼却施設「西工場」の建て替えや新市立病院の建設、長崎駅周辺土地区画整理事業、JR長崎線連続立体交差事業が控えるほか、大型コンベンション施設の建設の可能性も調査中。一般会計の中期財政見通しでは、新年度から5年間で計56億円の収支不足を予想し、各種事業費を削減して収支バランスを取る方針だが、大型事業が将来を見据えた投資として優先すべきものなのか。市は説明責任がある。

一方、県庁舎は2016年度に駅周辺に移転。市庁舎も移転すれば、市庁舎―県庁間の官庁街の空洞化が懸念される。県庁跡地に県立劇場建設を求める意見も一部で聞かれ、そうなれば市の新文化施設とのすみ分けも検討する必要がある。

10年後には新幹線が長崎駅に乗り入れ、県都は様変わりする。今でさえ、人の流れは駅周辺へ移りつつあり中心商店街に影響が出ている。そうした中、市の新庁舎と新文化施設はどのような役割を担うべきなのか。未来の町づくりを見据えながら、市民と行政が一緒に知恵を絞ることが求められている。
(田中祐作)

長崎新聞2013年1月26日(土)12面-1

長崎新聞2013年1月26日(土)12面-1

投稿者

長崎都市遺産研究会
長崎都市遺産研究会

長崎都市遺産研究会は、都市の中で埋もれていたり、解体されようとしている貴重な建築遺産を発掘、保全し、次世代に継承するための支援活動を行う市民団体です。

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