県庁舎跡地活用問題について、長崎市の提案の取り扱い:県議会一般質問議事録2016.06.09

現在の県庁舎

現在の県庁舎敷地、及び県警

 

長崎県議会一般質問でのやりとり(平成28年6月9日)

 

高比良議員 それでは次に、県庁舎跡地活用問題についてお尋ねいたします。

ご案内のとおり、県庁舎跡地に長崎市役所の移転をということをめぐる住民投票条例案が約3万人の有権者の署名に裏打ちをされて去る5月25日長崎市議会に上程をされました。条例提案者である田上市長は、これまでに県議会や市議会の議論を踏まえて慎重に検討を重ねてきたが、公会堂跡地に市役所を建設するという方針に至ったから、条例案には反対であるという意見を述べておりますが、市議会では3万人近い署名は重いという考えで一致していると報じられておりますものの、市民の声を聞いて、行政運営に活かすべきと賛同する者と、市庁舎を県有地に移転できるのが見通せない中で住民投票を実施する意味があるのかと疑問視する者に分かれ、所管の委員会は継続審査というふうになりました。

そしていみじくも昨日、市議会の方で所管の委員会が開催をされ、委員会としては条例案は否決をしたとのことであります。しかしながら、本会議での採決はまだ残っておりますので、最終的に決着はついていないというふうに思います。

市議会の所管の委員会で否決した要因は、先般、市議会の議長等が県を訪ねた折、協議後に、県はいまさら県庁舎跡地に市役所をという話にはならないとの立場と報道陣に語り、かつ、市庁舎移転を協議できない時期まで来ていると受け取ったと市議会議長が委員会で釈明したことが大きいというふうに聞いております。そのため、県庁舎跡地の活用は既に方向性が出ており、市の庁舎を移転するのは困難として、条例案を否決したと。

しかし、昨日の審議で、知事はこれまでの経緯を説明したものの、市庁舎をどうするかは市や市議会の問題であり、県として土地を貸す貸さないという議論以前の問題であると答えたと聞いていると答弁をされました。認識と言うか、受け止め方、発言が違うわけですよね。先に、県の意向を確認する必要があるという市議会議員の主張には私は本来は住民投票後の問題ではないかと思うわけでありますが、それはそれとして、知事の考えを再度公式の場において確認をしておきたいというふうに思うんです。そうでなければ、一定の一連の動きの中で、県としては大変不本意だというふうに思うからであります。

しからば、そこで、今からですね、ちょうど2年前の平成26年の6月定例会で、私がこの県庁舎の跡地移転、跡地活用問題を質したときに、知事はまず、県庁舎の跡地活用については平成26年4月に県庁舎跡地活用検討懇話会から提言をいただいたところであり、現在、その提言を踏まえつつ具体的な検討に着手した段階であって、公会堂代替施設を県庁跡地に整備するということについては、県としては何も決めていないし、また具体的な提案をいただいていない状況であると答えられました。

しからば、ということで、私の提案として、県庁舎の跡地には、長崎市のまちの成り立ち、あるいはこの地がこれまで果たしてきた役割、今でも市の中心部の人たちは県庁移転に反対をする理由、加えて、県庁舎が移転した場合には本館だけでなく別館や県警本部庁舎、新別館あるいは民間の多くの借り上げビルも空き家になり、人がいない、まちが動かないということになってしまう恐れがあるということ、そしてまた、県としては新たな箱物整備のために巨額の財政投資をしなくてもよい、等々をですね、総合的に勘案するときは、県庁の跡地には市庁舎を他の公共施設とあわせた複合的な施設として建設することが最も望ましいと考えるので、具体的に、今は何も決まっていないのであれば、跡地活用の検討の中で、市庁舎のことも、俎上に上げてはどうかと質問をいたしました。

しかし、それに対し、知事は、県庁舎跡地活用検討懇話会の提言を踏まえつつ、県市で連携を図りながら、検討を進めていくということになるということを前置きをしながら、市役所の庁舎の移転については、市の方から具体的な提案は一度もいただいたことがないというふうに答えられました。付け加えて、市の庁舎をどこに建設するかということについては、長崎市にとって極めて重要な事項であり、まずは市の意向を大切にしていかなければならないのではないかと考えているとも述べられたのであります。

しからば、今日、仮に、市議会の本会議で長崎市が住民投票条例を制定をして、そして、その結果、県庁舎の跡地での市庁舎建設の住民の意見が多数となったことをもって、市として市庁舎建設の候補地、予定地の一つとして、県庁舎跡地を考えたい、ついては、県に県庁舎跡地での市庁舎建設について検討の俎上に上げてほしいという正式な申し入れがあった場合、知事はこれを受けて、現在検討している作業に加えて、そのことを俎上に上げる考えがあるか、お尋ねをしたいと思います。


 

長崎県知事 この県庁舎の跡地活用の問題については、先ほど議員もお触れになられましたけれども、これまで県議会、あるいは2度にわたる懇話会からの提言などの経過を経て、去る2月県議会に対して、広場、交流・おもてなしの空間、質の高い文化・芸術ホールといった3つの方向性をお示しをし、その後、まちづくり・経済雇用対策特別委員会を設置していただき、ご審議を、ご議論をいただいているところであります。先ほどお触れになられましたように、この間、長崎市からは県庁舎跡地に市役所をというご提案は一度もいただいたところがなかったところであり、そもそも、市役所の位置については、まずは、市や市議会で、議論していただくべき課題であろうと考えております。仮の問題として、市から、県庁舎跡地に市役所を建設したいと申し出があった場合にどうするのかというお尋ねでありますけれども、仮定のお話であり、この場でお答えいたしかねるところであります。


 

高比良議員 知事としては、これまでの経緯からもですね、いま、言われたような答弁になることは予測に難くないところであります。しかし、これまでの検討経過があるかもしれませんけれども、証文の出し忘れということで済ませてはならんと思うんです。住民投票という直接請求によって、まさに地方自治における住民の参政権の行使によって得られた結果として、市民の多数が県庁舎の跡地には市役所がいいということになったときは、自治体を運営する者は最大限それを受け止めるというのは民主主義と地方自治の基本だと私は思うんです。

ましてや、検討作業はいまだ半ばであります。もちろん、市としてもそういったことを県に申し入れるには、他の問題も手伝って、腹をくくらなければならないでしょうが、そうした過程を通じて、正式に県に申し入れがなされたときは、民主主義のルールとして、県としてもこれを受け止めて、中身について検討や議論をしていかなければならないのではないでしょうか。市民であって県民でありますし、県内の3分の1の人口を占めるところからの申し出は、率直に受けてしかるべきだというふうに私は思います。しかし、今、住民投票条例も成立をしていないし、ましてや投票結果もわからないという中で、したがって、長崎市から正式な申し出もないままに、現時点で、県庁舎の跡地に市役所を建てられる可能性があるのかと尋ねられても答えようがないし、これまでの経緯だけで言えば否定的な言い方にしかならない、それはその通りだと思います。

だから私は今すぐ市役所移転の問題を自主的に検討の俎上に上げろと言っているのではありません。繰り返しになりますがあくまで一定の民主的なプロセスを経て、市からの申し入れが正式になされたとした場合の知事の立ち方を聞いているのであります。仮定の問題には答えられないといったことではなくて、この立ち方として、知事の答弁を再度お願いをしたいと思います。


 

長崎県知事 経過については、先ほど申しあげたような経過にあるわけでありまして、そういう現状、経過を踏まえて、まずは市の方でご判断をいただく必要があると考えております。その後で、市のご判断として県にお申し出をいただいたらその段階で検討をしてまいりたいと思います。


 

高比良議員 承知をしました。否定も肯定もしないといったことでありますけれども、逆に言えば、市の意気込み如何の問題だということだというふうに理解します。

それでは、少し質問を変えますが、懇話会の提言にあるホール機能のことですけれども、ホール機能については、長崎市が公会堂の代替施設の建設を申し入れる中で、同じく長崎市が計画しているMICE施設のホールとの重複を避ける必要があると。ついては、MICEのホールの内容が示されていない、オーソライズされていない以上、長崎市からの申し入れに沿って公会堂の代替施設と言える芸術・文化ホールをつくるとは言えないと知事は言ってきたというふうに思うんです。

そしてさらに、事務方が整理したペーパーですが、これは当然、知事も認識をしているというふうに思いますが、県は文化拠点としてアルカス佐世保を整備済みであり、また、時津のカナリーホールやシーハット大村等、県下の文化ホールの充足状況を鑑みて、新たな県立ホール、県立文化ホールをつくる必要はないとの判断から、平成15年に文化施設整備基金を廃止をしたと。よって、音楽専用ホールの整備が現時点で必要とまでは言えないと記されています。これは300席だろうと500席だろうと1,000席であろうと同じだというふうに思うんです。

そして、そのペーパーには、加えて、県としては文化施設整備の経緯から、中規模の平土間の多目的交流スペースの整備を中心に検討すると書かれているわけであります。しかしこういった経緯や整理がありながら、県と長崎市の職員の間でホール機能について何回か協議がなされております。そしてまた、先の本会議でこれに関連する質問に、知事は芸術文化ホールは興行採算性の観点からは1,000席に優位性があるというふうに答えられて、いかにも1,000席の文化ホールをつくることを決定したのではないかともとられるような答弁をされました。加えて昨日、企画振興部長は市が公会堂代替施設として提案している内容と一致しており、今後、一緒に質の高さについて詰めていきたいというふうに答弁をしました。

私としては、いつそのようになっていったのか、非常に不可解なわけであります。

先ほど述べましたように、知事はホール機能の重複は避けると言っているのに、MICE施設のホール機能について、長崎市からボールが返ってきていないんじゃありませんか。

一方、市が先の長崎市議会の総務委員会で示した資料によると、交流拠点用地の活用の仕方としていくつか示しながらも、やはりMICE機能を中核としたものが一番いいんだと、そしてそのモデルプランは、メインホールで3,000㎡、メッセ等の展示スペースで3,000㎡、会議室等で3,000㎡、多目的ホールで1,500㎡だと述べております。メインホールや展示スペースを体育館のフロアのような平土間だと記されているわけでありますが、多目的ホールについては中身が示されていません。果たしてこの案が市議会の賛同を得るかどうかわかりませんが、多目的ホールというのは一体何なのかも含めて、市当局内部の考え方も固まっていないといった現状であるように見受けられます。

逆に言えば、県庁舎の跡地問題での決着を見ていた。そして市長は公会堂の代替施設のめどがついたとまで言っているわけであります。しかし、県としての考え方の手順は、知事がこれまで答弁してきたように、逆ではありませんか。そうであれば、県としてはこれまでのいろんな経緯から、ホールについては平土間の中規模の多目的交流スペースの整備を中心に検討していくということをはっきりあげるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。


 

企画振興部長 ただいま市の方と事務的に協議しておりますのは、まずは県議会に対しまして、整備方針を固めた上で、協議をさせていただきたいということで、その過程の中で、協議をしているところでございます。県庁跡地に検討しているホールについては、2月の定例県議会において歴史あるこの地にふさわしい文化の中心となる質の高い文化芸術ホールという方向性をお示しをいたしまして、特別委員会をはじめ、県議会のご意見をいただきながら、検討を進めているところでございます。

ホールの席数については、興行採算性の観点から、1,000席程度に優位性があるということで、そういったホールの規模的な問題につきましては、長崎市から提案があったホールの規模感と方向性が一致するのではないかということで、考えているところでございます。現在、整備方針という案を取りまとめに向けて県と長崎市がそれぞれ考える主な用途、それから、それに応じた機能面などについて協議を行っているということでご理解をいただきたいというふうに思います。


 

高比良議員 今、私の方はね、指摘をさせていただいたこれまでの経緯、いつもこれまでの経緯といったことを答弁されるんで、逆にこれまでの経緯といったことについてお話をさせていただいた、そこのやっぱりプロセスというかですね、この点はしっかり踏まえて今後もですね、作業内容というか、進め方、あるいは、いろんな枠組みの構築といったことについてはですね、腐心をしてもらいたいというふうに思うんです。

どうもですね、今までやってきたことといつの間にか違うようなやり方になってしまっているんではないか、その結果として長崎市長はああいうふうな発言までしているといったことが、県としては不本意だと思うんですよ。ですからその辺も含めて、県としての立場を、これまで踏襲してきた立場をそれこそ崩さずにやってもらいたいというふうに思います。

このホールのことに限らず、県庁舎の移転によって、別館や県警本部も壊されて、そして、新別館やその他多くの民間の借り上げスペースも空いてしまうということになります。人もいなくなり、したがって先ほども言いましたけど、まちも動かなくなってしまう可能性もあります。

その一方で、本館の跡地、第一別館も含まれるかもしれませんが、そこだけが、多額の費用をかけていわば観光的な施設になる。しかし、稼働状況についての見通しは、まだ示されていません。そういうことが、県と長崎市の一番中心部のまちの整備のあり方として進んでいっていいのかということについては、私は長崎市選出の議員として、なかなか納得がいくものではありませんと明確に述べさせていただく次第です。

今日の質疑の中で、知事は、仮定の話にはなかなか答えにくい、答えられないということを前提としつつもですね、市が正式に県の方に打診をしてきたときには、それはそのときに考えるというような答弁がありました。それでもってですね、私としては了としたいと思います。

付け加えて言うならば、県警本部跡地や、場合によっては第3別館、さらには江戸町公園の敷地の活用も視野に入れて、市の庁舎と懇話会の提言にあるものをうまく組み合わせて、他の先進地にも見られるような複合的な施設を県市でつくり、賑わいの場をつくっていくことが土地利用のあり方として有用だと主張させていただきまして、次の質問に移りたいというふうに思います。

 

長崎県議会本会議平成28年6月定例会一般質問

高比良元議員(県民主役の会)会議録

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長崎都市遺産研究会
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