長崎市公会堂の保存について:県議会一般質問議事録2015.09.14

野本三雄議議員 (1)公会堂建設の歴史・文化・建築的価値についての知事の所見。

 長崎の戦後復興を象徴し、戦後建築の大きな足跡を保存し活用することが、長崎のまちづくりの歴史にとって貴重な建築であると思うのである。その対応についてであります。

 本物件は、昭和30年、恒久平和の象徴都市として再生させる「長崎国際文化センター建設委員会」の中で、中核施設として計画、建設された歴史的にも大変価値の高い建物である。また、国際的な非政府組織DOCOMOMOの当会が2003年に選定した、日本を代表する歴史的な価値のある近代建築100選の一つに選ばれている。

 戦後日本が、建築設計を都市計画において、いかに戦争の惨禍を克服しようとしたかを理解する上で重要な歴史的建造物であり、長崎の歴史を物語る地域資源の何物でもない、保存すべき建物と考えられます。

 しかも、当時の長崎国際文化センターの会長は西岡竹次郎知事であり、本建物の建設に当たっては県も大きく関与したことも事実であります。

 本物件は、将来的に文化財として価値のある建物である。長崎市は、現在の長崎市公会堂を壊し、跡地に市庁舎を建設したいと考えている。私自身、本建物の建設に関わった者の一人であり、本建物を壊すことは、歴史的、文化的なものとして大変な損失になると考えている。

 本建物が市所有の建物であり、保存するかどうかについては、一義的には市の問題であることは承知している。歴史的、文化的に価値のある建物を保存するという視点において、県としての考え方があってしかるべきと考えている。 長崎市が保存しないのであれば、県が保存するという考え方もあると思う。

 県として、文化的な価値のある建物として保存していく考えはないか、お尋ねする。 知事は、長崎市と話し合いをし、保存していこうという考えはないか、お尋ねいたします。

副議長(中島 義君) 知事。

長崎県知事(中村法道君) この長崎市の公会堂につきましては、原爆10周年の昭和30年に設立されました「長崎国際文化センター建設委員会」において、「国際文化の向上と恒久平和の理想を象徴するため、国際文化センターを原爆の地長崎に建設する」という理想のもと、国内外から資金を募り建設されたものであるという経緯は、私も承知しているところであります。

 しかしながら、この長崎市公会堂の取り扱いにつきましては、既に所有者である長崎市において、このような経緯も踏まえ、既に解体の方 針が決定されたところでありまして、跡地の利活用についても計画が進められていると理解をいたしております。

 県として、これを保存、継承していくということについては、財源負担等もあり、なかなか難しいものと考えているところであります。

 副議長(中島 義君) 野本議員―42番。

 野本三雄議員 以後は座ったまま質問させていただきます。

 知事の今の答弁については、私は必ずしも承服できないわけでありますが、そういう視点というよりも、結局、あの建物の歴史的価値、そして建築的価値、文化的価値等々は、もう長崎県が身を乗り出してほしい。長崎市が、今、知事が説明したとおりのことは私も存じあげておるわけでありますけれども、そこを、今、あえてこの県議会で私が質問をさせてもらっているのは、決して今からでも遅くはない、あれを壊してしまえば、もうそれこそ終わり、あれを今残すことに意義があるということで質問しているわけでありますので、この問題については非常に貴重な財産ということ、このことを強く訴えて、今、申し上げているわけであります。

 また、参考になる話をさせていただきますけれども、ここに復刻版も相当関係者が集めてつくってもらって、私は感心をしております。

 時間もないところでありますけれども、参考までに少し申し上げます。私は、過去に、旧上海銀行の保存の時、申し上げたいきさつがありましたので、そのことに重なりますので、あわせて今回もまた質問させてもらいます。

 日本の政治家は、目先のことしか考えない。さらに言えば、日本人そのものが100年先のことを考えない国民性を持っているのではないか。 会社の社長でも、新社屋を建設し、それを花道にして引退するなどということをよく耳にする。それに引きかえ西欧諸国では、教会をつくるのに何百年もかける、自分が生きているうちにできないことはわかっていながら、新たに着工し、また営々と建設を続ける。

 フランスのベルサイユ宮殿を模したと言われる旧赤坂離宮を温存し、誕生した現在の迎賓館のことである。日本にもそれこそ外国の賓客を迎えるための迎賓館があっていいじゃないかということがあって議論があり、いろんな案があったが、その中で最も有力だったのは、現存する赤坂離宮を取り壊して、現代建築を象徴するような代表的な建築物をつくるという案と、文化的価値の高い旧建築を改修して温存するという2つの案であった。

 ところが、改修するにはものすごく金がかかる、取り壊して新調した方がかえって安い、使い勝手のいいものができるという建設省を中心 とした事務方の大勢は建築論だった。

 しかし、どうやら当時の佐藤栄作総理は、この論に反対だったらしく、民間の有識者を中心として懇談会をつくり、温存の方向へ持っていかれたように思う。その結果、今見られるような旧赤坂離宮構内の迎賓館がある。外観はほとんど昔と変わらないが、改修、保存には本当にお金がかかった。内装にも文化的価値の高いものが多かっただけに大変な作業だったという。昔の材料が得られず、再現の不可能な部分もあったらしい。しかし、とにかくベルサイユスタ イルの明治建築は温存されたという趣旨である。

 私は、今やクローズアップされるこの公会堂は、語りかける、そして誘いかける、ぬくもりのある街並みとなって都市のあり方へ移行しつつある。

 ずばり申し上げて、さきに耐震普及センターの中で長崎市長あてに要望があった。国内屈指の建築家や構造専門家の所見として、市長へ提出した長崎市公会堂の存続・再生を求める要望書の代表発起人池田武邦氏(日本初の超高層ビル 霞が関ビル設計者)は、「建築物を再生するのに、技術的問題は解決可能である」と。

 そして、同じく発起人で、今川憲英氏(外科医的建築家構造再生スペシャリスト)は、「構造体は、人間でいえばまだ45歳ぐらいで、補強 で十分に耐震性を確保できる。構造寿命には、 構造骨格の配置や偏心などの問題が重要であるが、バランスがよいので長寿命化には適している。80年以上の寿命を確保している」という。 専門家所見による構造的な問題があるというのは、そういう説明では問題ないと言われている わけですから、なぜ市庁舎がこの公会堂跡地でなければならないのかということを私は申し上げておるわけであります。

 いずれにしても、この問題を、私は決して今遅いと思っておりませんので、ぜひ知事も、当時の西岡知事がこの長崎国際文化センターの設 立の時、先頭に立ってやられた。しかも、この設計をしたのは長崎市出身の武基雄元早稲田大学の先生でありますが、こういう貴重な、これを壊しては、将来間違いなく長崎の文化財になるこの建物がなくなることは本当にしのびないと、そういう気持ちであえて申し上げておりますので、知事、もう一つ視点を変えて、この問題についての検討をしていただきたいということを再度申し上げますので、お答えいただきたいと思います。

 副議長(中島義君) 知事。

長崎県知事(中村法道君) 先ほど申し上げましたように、今、長崎市民の皆様方の中にもいろいろなご議論があるものと考えておりますが、やはり基本的には、それを所有、所管する市の方で判断されるべき課題であると認識をいたしているところでございますので、今、議員ご指摘の点等も踏まえて、市の方で、まずはどういう方向でこれから取り組んでいかれるのか、明らかにされるべき性格のものではなかろうかと考えております。

 副議長(中島 義君) 野本議員―42番。

野本三雄議員 今のようなキャッチボールではどうにもなりません。そこに私は、市 長との話し合いも知事にやってもらって、そして、もう一度この公会堂のあるべき姿等々について、あれを壊す理由が、もう構造的な心配は要らないという話になったら、結局あそこに市庁舎をつくるという、市庁舎をつくるために壊すということ自体、私はそういう話し方が納得できないわけでありまして、市庁舎はまだほかのところにもつくれるじゃないかということがありますし、県庁跡地の問題だってあるわけでありますから、これからその問題も出てくると思います。そういう中で、もう一つ市庁舎を建てる位置は、必ずしも今の公会堂用地でなくて、ほかのところに持ってきて、あの公会堂は温存するということ、その価値観をもう一回認識し直す必要があるということをあえて申し上げておきたいと思います。

 教育委員会教育長にもちょっと文化財的な問題も含めて、価値観も含めてお尋ねいたします。

 副議長(中島 義君) 教育委員会教育長。

 教育委員会教育長(池松誠二君) 今、議員からご指摘がありました文化の継承という意味では、建物などはその物理的な継承の方法というのはいろいろあると思うんですが、制度的なご説明をさせていただきますと、市町や個人が所 有する建造物等を県の責任で維持、保存していくためには、まず県指定文化財として指定をする手続が必要であります。

 その手続につきましては、市町の教育委員会で文化財としての価値や所有者が、将来にわたって保存する旨を記載した推薦書を作成し、県 教育委員会に提出の上、長崎県文化財保護審議会において専門的に調査、審議の後、決定をされるという手続を踏む必要がございます。そういった意味では、先ほど知事がご答弁申し上げましたが、所有者たる長崎市の方で、公会堂の建物につきましては、専門家の方々の文化的な価値のご意見も踏まえた上で解体という判断を一定なさっておりますので、県として、今の制度の中で、それを飛び越えて県が独断で保存をするというようなことは非常に難しい話でして、制度的にはできないというふうに考えているところでございます。

 副議長(中島 義君) 野本議員―42番。

野本三雄議員 手法論ということもありまして、これまで長崎市の物件なので長崎市が決めることだということで、県の方としても 長崎市の出方を見ながらきたということも、これは今のお話でもそうですけれども。

 そこで私が申し上げたいのは、長崎市の考え方が最終的にこういうふうになってきたならば、この今の長崎市の考え方について、県としても、あるいは教育委員会教育長としても教育的見地から、あるいは知事は知事としての長崎県としての考え方から、長崎市の方にこうこう、こういう問題等々からしても再考の余地はないのかということを、議会は議会で決議はされておりますけれども、私は今の世の中に、過去にも決議したことが変えられたことは多々例があるわ けでありますから、私は、何もこのことがそうなったからということで問題だと必ず決めつけることではないと思っておりますので、このことについては口酸っぱく申し上げて、もう一度、知事は視点を変えて、これまでの歴史の中から検討して、そして、長崎市長とぜひ話をしていただくように、これは要望をしておきたいと思います。

投稿者

長崎都市遺産研究会
長崎都市遺産研究会

長崎都市遺産研究会は、都市の中で埋もれていたり、解体されようとしている貴重な建築遺産を発掘、保全し、次世代に継承するための支援活動を行う市民団体です。

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