コルビュジェの世界遺産登録と長崎の近代(モダニズム)建築

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竣工当初の長崎市公会堂(撮影:川澄明男)

 

フランスの建築家、ル・コルビュジェは、20世紀における世界中の建築に大きな影響を与えました。日本には、唯一、西洋美術館が存在しますが、この度、世界遺産候補として、7か国17資産が共同推薦され、話題になっています。

1959年に完成した西洋美術館は、3人の日本人の弟子が実施設計や監理を担当しました。そのうちの一人、吉阪隆正はフランスから帰国後、長崎の海星学園校舎・中央館を設計しました。しかし昨年、耐震不足のため解体され、現在建替え工事が進められています。

コルビュジェが主導した近代建築運動は、戦後日本の建築にも大きな影響を与え、原爆で焼け野原となった長崎では、著名な建築家たちが、復興のために数々の近代(モダニズム)建築を設計しました。その中で現在残っているのは、今井兼次の日本二十六聖人記念館(1962年)、白井晟一の親和銀行大波止支店(1963年)、そして武基雄の長崎市公会堂(1962年)。いわば、長崎の三大近代建築です。

軍艦島の30号棟は、コルビュジェよりも先行する20世紀初頭の集合住宅です。その後の16-20号棟も世界に先行した存在で、戦中、戦後から閉山となる1970年代まで次々と建築が建てられました。

コルビュジェの作品群が世界遺産に登録されると、近代建築を求めて世界中から観光客が訪れます。国内では、ドコモモが優れた建築を選出する一方、解体される建物も少なくありません。

長崎は、いわゆる洋館だけではなく、20世紀において世界から影響を受けた近代建築の歴史を証明できるまちです。地元の理解は進んでいませんが、世界遺産登録をきっかけに、長崎の近代建築群が再評価されることを期待しています。危機的状況にある長崎市公会堂が、貴重な観光資源でもあるということに、そろそろ気づいてくれると良いのですが。

投稿者

長崎都市遺産研究会
長崎都市遺産研究会

長崎都市遺産研究会は、都市の中で埋もれていたり、解体されようとしている貴重な建築遺産を発掘、保全し、次世代に継承するための支援活動を行う市民団体です。

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